
「板東武者は馬が上手」。世に「武士」というものが生まれてから、ずっとそう言われてきた。
その代表例として挙げられるのは源義経であろう。彼こそは、騎馬を軍団として用いた、世界初の人なのであるから。 彼は板東武者であり、その少年期を奥州平泉(現在の岩手県平泉地方)で過ごした。奥州は馬の産地である。 板東(現在の東京)と奥州を結ぶ道の一つの途中に、「いわき湯本」がある。義経の時代、この街は温泉宿場であるとともに、馬の売買をする市場でもあった。 そういう、多少なりとも馬に縁のあるこの街に隣接し、「いわき湯本温泉郷」を形づくる白鳥温泉には、「馬の温泉」として知られる施設がある。 効能は、「人に効いて、馬に効かないわけがない」と、いい切るわけではないが、JRAの競走馬のリハビリやリフレッシュに重宝され、全国からファンが訪れる場所だ。 温泉を浴び、目をトロンとさせている馬を見ると、「さぞ気持ちが良いのだろう」と思う。 リハビリ中の馬には、専門の調教師がいて、温泉入浴を取り入れたカリキュラムがあるわけだが、果たして人間にはどうか? いわき湯本温泉には、「バルネオセラピスト(温泉保養士)」なる人々がいる。古滝屋には、16人いるので、療養や湯治目的の人は、懇切な入浴相談が受けられる。 「馬に習え」ではないが、心身をリフレッシュさせるリハビリが、当然人にも必要である。 |
![]() 温泉につかり、リハビリをする競走馬。夢見心地の表情に、この地の「馬」にまつわる縁を感じる |
![]() 温泉の地熱で、梅と桜が同時に咲くこともあるという ![]() |
また、春に「馬の温泉」あたりを歩くと、時期によっては不思議な風景に出会うことがある。梅と桜が並んで咲いているのである。温泉での地熱が強いための現象であるが、その見事さにはつい心を奪われる。
馬の調教を考えて、車の出入りがないコースでもあるので、「湯っくり遊歩」には最適の一コマでもある。 梅に桜、馬のひづめの音、排気音のない静かな道。「今度復帰したら、あの馬に賭けるか…」などと無粋なことは言わずに、何も考えずに、ゆったりと過ごすのも一興であろう。 この馬の温泉の桜を皮切りに、スパリゾートハワイアンズ、御幸山、観音山公園と、湯本地域“桜づくし”のコースはいかがだろう。 露天風呂に花びらを浮かべての「桜風呂」も風流。「湯当たりですか? サクラ色ですよ」などと桜を冷やかしながら、今夜あたり一杯どうです? (元禄彩雅宿古滝屋 斉藤英明) |