Story07 青葉山の虚空蔵尊

 常磐湯本町とその周辺には、石仏、石塔の類が多い。
 日本は本来、「八百万の神」を信仰しているのだから、あちこちに神様が奉られていても不思議ではないのだが、小さな石仏、石塔が点在しているのを見るたびに、「ずいぶんと多くあるのだな」と感じる。
 全国的に有名な神社仏閣の、見上げるほど大きな仏像や社には、当時の権力者の皮算用が見え隠れする。だが、本当に救いを求める純粋な手は見えてこない。
 逆に、こうした小さな石仏、石塔の方が、その土地に住む人々の生活の喜怒哀楽を共有し、様々な想いや念を浴びているような気がする。大きな仏像には感嘆、小さな石仏に畏怖するものがあるのは、そうした念によるものなのだろうか。
 石と言えば、以前紹介した湯の岳の三箱石が思い出される。青葉山の山頂にも、奇妙な石がある。
 常磐市民運動場に隣接し、ときわ台生活環境保全林に指定されている日渡地区には、多くの遊歩道が整備されている。
 その一つが、「青葉通り」と呼ばれる、高倉から内郷に抜ける通り沿いに入り口を持つ「かげろうの路」。
 奥に踏み入ると、「海の見える丘」「しらうめの路」と、遊歩道が続く。この周辺はロッククライミングの練習にもってこいの場所らしく、週末にはクライマーが訪れる。

 遊歩道から奥に入り、山頂を目指すと現れる岩壁。休日にはロッククライマーたちが登頂を挑む。登り切った先に、丸く不思議な「きのこ岩」があるという

 複数ある遊歩道のうち、「青葉虚空蔵尊参道」と書かれた碑のある入り口(左)。登山道の先には、巨岩に守られた虚空蔵尊が静かに鎮座する

  


 ロープをかけ、断崖を登る彼らの下方には青葉虚空蔵尊がある。不思議な石は、この断崖の上にある「きのこ岩」。どことなく不安定に鎮座する巨石は、自然的とも人工的とも言えない、奇妙な容姿を持つ。
 これは、石仏、石塔の類ではないが、「祭政一致」のころの名残りを感じさせ、何か儀式的な趣のある、一種の“ミステリーストーン”だ。
 さて、その下方にある青葉虚空蔵尊。昔は「煙草の神様」として有名だった。旧正月の12月には、夜通し太鼓をたたき、かがり火を焚いて、信者(今なら愛煙家?)や温泉宿の客や芸者で賑わったらしい。
 平成15年7月1日から煙草が値上げ。かねてより「禁煙しろ!」と責め立てられていたこともあり、煙草を止めようと思っていたが、煙草の神様とも知らずに、虚空蔵様で、手を合わせてしまった。
 先に謝っておこう。バチが当たるので煙草は止められません。ごめんなさい、常務。
     (元禄彩雅宿古滝屋 斉藤英明)