最新号 August 2020

波光

2020.8月号 “人が帰ってこねーんだ”

 取材と義理ごとで過日、久しぶりに双葉郡へ向かった。走るにつれ、9年半前の東日本大震災、原発事故の爪痕が生々しく残る。避難指示が解除されたとはいえ、人の姿はどこもまばら。社会は今、コロナ禍一色。収束半ばだが、大災害の復興もまだ途上なのだ。
 2011年3月11日午後2時46分。東日本の太平洋沿岸一帯は巨大地震に伴う大津波に襲われ、“地獄絵”が広がった。さらに東電福島第一原発が爆発、放射線物質の放出・拡散でいわき市民をはじめ、隣接する広野、楢葉、富岡、大熊町など双葉郡住民に避難命令が出、多くの人々が故郷を追われた。
 震災後、たびたび取材でかの地区へ出かけていたが、この6月、およそ10カ月ぶりに富岡町近隣へ。人の姿、車の数も異常に少なく、住居や商店は戸締まりされているものの看板などは朽ち、生活感はほとんど感じられない。
 山間部の川内村。避難指示は解除されていたが、出会った古老は、「復興の建物は出来たけど、人がなー、帰ってこねーんだよ」。もうすぐひと昔の丸10年の歳月を刻むものの、“本当の復興”はいつ終わるのか。風化させるにはまだ早すぎる。
 「人が戻らない」のは、いわきも同じだ。特に、区画整理事業が終了した沿岸部は空き地が目立つ。道路、防潮堤などは着々だが、人が人らしく生活するのは、ハード面の整備だけではない。 (編集長)

次号予告

9月号は2020年8月下旬発行
★連載:私の博物誌/七浜海道を行く/うまい話し新聞別刊★エッセー:「色」のいろいろ 色彩学のすすめ/そうだよ、学んで楽しもう! ほか