最新号 June 2020

波光

2020.6月号 “結”は?“お陰さま”は?

 この国には隣組という組織があり、互助の文化が育ってきた。春秋の農繁期などには「結(ゆい)」のもと、助け合い、分け合いも頻繁に行われていた。昨今、マスク1つにしても高値での販売や買い占めが相次ぐ。この傾向、どう評価したらいいか。
 「お陰(かげ)さまで」。事あるごとにこんな言葉が交わされている。相手に対し真摯(しんし)な気持ち、そして厚情といった意も含まれている。こうした一言が、“仁”であり、いわば人間関係の根幹をなしていたものだ。
 あの東日本大震災直後。大津波で家を失ったため、家族を避難させ、一人、編集部に居座った。原発事故の影響下、一帯は不気味なほどで夜間は真っ暗、無人状態。心配してくれた友人、知人からは飲食物類の差し入れが相次いだ。感謝の言葉もなかった。
 コロナ禍の今、我先にとばかり、必需品、生活用品類の買いだめが間断ない。特にマスクは異常だ。品薄で医療関係者をはじめ、一般市民も悲鳴を上げている中、通常の数倍という、バカげた高値で販売の店も急増のようだ。常道から外れた商売は先々、続いた試しはない。
 市民の疲弊が日に日に増している。この惨禍、大震災よりひどいとの声も小さくない。一方の政治はトップの言動が大ぶれし、国民のひんしゅくを買うありさまだ。いつの時代も民衆は“苛政(かせい)”には背を向けてきた。知っているのだろうか。 (編集長)

次号予告

7月号は2020年6月下旬発行
★連載:私の博物誌/七浜海道を行く/うまい話し新聞別刊★エッセー:ある日、突然…「心のケア」/色は“いろいろ”? ほか