最新号 July 2019

波光

2019.7月号 夏の宵、ぜひ『雨月物語』を

 暇を見て、編集部近辺にある数軒の書店に足を運ぶ。経済事情もあって、買ってくるのはもっぱら文庫本。ジャンルはいろいろだが、数日前、遠い昔に触れた因縁の本に出合い、再読した。夏向き“恐怖本”である。
 年間の読書量を決め、本を読みふけってきた。近年は“認知症予防”の意味も含め、ページをめくっている。そんな過日、古書も販売している街道沿いの店舗に入ったところ、中学生のころに好奇心で読んだ『雨月物語』を見つけ、勇んで購入した。
 中学時代、「自分の頭脳に理数系(の勉強)は合わない」と勝手に決め、読書・文系一本やり。校内の図書室にあった「怪奇小説」との帯に興味を持ち、難解な文字を飛ばしつつ、必死で『雨月』を読んだ昔があった。
 作者の上田秋成(1734―1809)は、江戸時代の“異端”文人で医師。買ったこの本は装丁も見事で、ハードカバーのケース付き。値段は100円。彼は私生児として生まれ、青壮年時代は無頼派、放蕩(ほうとう)もしたが、自らの力量を信じて綴(つづ)った怪異な物語は今も影響大。夏の宵、ぜひ、この“お化け本”を。
 先の大震災で家屋流失の被害に遭い、すべて大津波にさらわれた。蔵書も結構な数だったが雲散霧消し、いまだに悔やみきれない。失った本は二度と戻らないが、今、欠け始めた知識の穴埋めを図るため、むきになって本あさりに走っている。  (編集長)

次号予告

8月号は2019年7月下旬発行
★連載:いわき再発見シリーズ13「歩み続けて老舗」/私の博物誌★エッセー:母のホンネ/ゲンバ女子/まぁ〜るく、まるく ほか